難だ躁躁

躁状態で書いた日記を公開する羞恥プレイをしています。

夜のキャンパス、秋、自転車、雨

2017 10/20
 日付はもうすぐ変わる。暫く直線が続くキャンパス、互いに重なりつつ車輪が4つ並ぶ。この、自転車に乗った2人組の男たちほど純粋に夜を謳歌しているものはいないだろう。呼吸の合間に無自覚にペダルが押し込まれ、座ったままの身体が水平に走る。管理された暗がりの中、この滑るような前進が、すべて予定されていた美しい調和の中にあるかのよう、眠りについた建物が彼らを見下ろす。彼らはゆっくりと流れていく校舎たちに目もくれず、ひたすら眠ることのない道路脇の常夜灯が、荒いアスファルトのささくれと一緒に彼らの体の一部となった焦げ茶色の歯車の回転をかわるがわる照らす。道の真中に植わった銀杏を避け、道路脇の植え込みと完璧な距離に付けたあと、彼らのヘッドライトはそれを自慢するかのように小気味よく左右に触れる。露に濡れる緑から光の円が照り返し、前を行く男が後ろに笑いかけるたび、その白い歯が閃く。返す声の生気は拡散することなく、穏やかに広がって彼らをまとう。その夜は小雨だったかもしれない。霧に吹かれたような均一な小滴が心地よく彼らの肩を濡らしたかもしれない。今この瞬間に、自分たちの生を疑わせない絶対性。過去とも未来とも切り離された淡い光の船が、周囲の闇に道を譲らせながら、秋の夜長を吸い取って緩やかに前進する。